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東京高等裁判所 昭和53年(ラ)93号 決定 1978年10月05日

抗告人

岡本とめ

主文

1  本件抗告を棄却する。

2  抗告費用は、抗告人の負担とする。

理由

第一抗告の趣旨

原決定を取消し、更に相当の裁判を求める。

第二抗告理由の要旨

一佐藤俊雄は、昭和五一年一二月二四日に、東京法務局所属公証人吉良敬三郎作成昭和五一年第二九五九号債務弁済契約公正証書の執行力ある正本に基き岡本欣也の所有に係る別紙目録記載の不動産につき競売を申立て、東京地方裁判所は、昭和五一年一二月二四日に強制競売手続開始決定をした。

二東京地方裁判所は、昭和五二年四月一日に、本件不動産について入札払を命じ、同年同月一四日に、入札期日を同年五月一九日、競落期日を同年五月二四日、最低入札価額を金一二七万円として公告した。

三右入札期日及び競落期日は職権により、それぞれ昭和五二年九月二二日及び同月二七日に変更された。

四右入札期日において、マーキスプレイングカード株式会社代理人東寿美雄が一、二八一、〇〇〇円で最高入札の申出をなし、昭和五二年九月二七日に、競落許可決定がなされ、右決定は確定した。

五然るに、同社は昭和五二年一一月一四日と定められた競落代金支払期日にその支払をしなかつたので、東京地方裁判所は、新たに、入札申出人の立てるべき保証の額を入札申出価額の十分の五とする特別売却条件を定めて、昭和五二年一一月二八日に入札期日を昭和五三年一月一九日、競落期日を同年同月二四日、最低入札価額を一二七万円として公告した。

六右入札期日において、抗告人は東寿美雄を代理人として一、三八一、〇〇〇円で最高価入札の申出をなしたにも拘らず、東京地方裁判所執行官小田代健二は、右東寿美雄が先の入札期日においてマーキスプレイングカード株式会社の代理人として最高価入札の申出をなした者である事を理由として、前記入札申出を無効とし、一二七万円で入札申出をした佐藤俊雄を最高価入札人として呼上げた。

七抗告人は、右執行官の処分を不当として、民事訴訟法第六百八十八条第五項の規定は前の競落人の代理人が再競売において前の競落人以外の者の代理人として関与する事までも禁じた趣旨ではないこと及び仮にそうでないとしても、抗告人は東寿美雄の関与が拒絶されるや直ちに岡本啓造を代理人に選任したのにこれを無視したことを理由に競落許可についての異議を申立てたので、前記競落期日は、昭和五三年二月三日に延期された。

八原審は、抗告人の異議申立を正当と認めず、右期日に本件競落許可決定を言渡した。

九よつて、抗告人は、右異議申立事由を正当と認めて原決定を取消し競落不許の裁判を求めるため本件抗告に及んだ。

第三当裁判所の判断

一記録によれば、前記第二の一から八までの事実を認めることができる。

二しかし、凡そ弁護士でない者が、前の競落人の代理人として最初の競売に関与した後、更に再競売において、前の競落人以外の者の代理人として競買に加わることは、民事訴訟法第六百八十八条第五項の法意に照して許されないものと解すべきである。蓋し、そのような者は、特段の事情がない限り競買に加わる事を業とする者であると推認され、その場合はたとえ代理人の名目で行動していても、実際には自己のために競買に参加している事が明白だからである。これを本件について見るに、東寿美雄が弁護士でないことは、当裁判所に顕著な事実であり、また、記録によれば前競落人マーキプレイングカード株式会社が東寿美雄を代理人に選任したのは、前の入札期日である昭和五二年九月二二日の当日であり、抗告人が東寿美雄を代理人に選任したのも新たな入札期日である昭和五三年一月一九日の当日である事が認められるから、東寿美雄が東京地方裁判所入札場に待機して、他の入札希望者の名義を用いて自己のために入札に参加しているものと推認することが相当であり、これに反する特段の事情を窺うに足りる資料はない。それ故、本件において、東寿美雄が抗告人の代理人として再入札に参加する事を排除した執行官の処分は正当であり、これを是認した原決定には抗告人主張の如き違法はない。

三また、入札払の場合には、入札書に記載された者が入札人の代理人となるのであるから、その者が右に述べたように代理人としての適格を欠く場合にはその入札は無効であり、入札開封後に他の者を代理人に選任してもそれによつて右無効が治癒される理由はなから、この点に関する抗告人の主張も理由がない。<以下、省略>

(高津環 横山長 三井哲夫)

別紙目録<省略>

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